インピンジメント症候群を極める

インピンジメント症候群の基礎と評価方法

インピンジメントとは

インピンジメントという言葉は、日本語で挟まる・衝突という意味があります。
インピンジメントとは、簡単にいうと上肢を挙上運動時に痛みがでる事を言います。
インピンジメントには二種類あります

エクスターナルインピンジメント(肩峰下インピンジメント)

いわゆる、一般的によく言われるインピンジメントです。肩峰下部と上腕骨大結節の間の肩峰下滑液包や腱板が挟み込まれて痛みがでる症状の事です。
また、生まれつき骨が変形している場合(骨棘にトゲができる)や高齢者や円背姿勢などの姿勢不良による腱板の変形や血行不良による症状がでる場合もあります。

インターナルインピンジメント

野球選手によく見らえる投球障害肩といわれる病名です。上腕骨大結節と肩甲骨後上方関節窩が衝突することで痛みがでる症状の事です。

インピンジメントの評価方法

一般的な評価方法

MRI・単純X線検査・超音波検査があります。

インピンジメントの評価方法はいくつかありますが代表的な2つ紹介します

Neer法

検査方法としては、肩甲骨を下方へ押し付け上腕骨を肩峰下面に押し付けるように他動的に外転させ90°から軽度外転で疼痛の有無をみる。
陽性の場合は、大結節が肩峰の下面にインピンジメントする事により疼痛がみられる。

Hawkins法

検査方法としては、肩関節前挙上90°位で、検者により他動的に肩関節を内旋させ烏口突起に圧迫させ疼痛の有無をみる。
陽性の場合は、大結節が烏口肩峰靱帯の下に挟み込まれることにより疼痛がみられる。

インピンジメントの治療方法

インピンジメントの治療方法
・電気治療
・安静療法
・投薬療法
・リハビリによる理学療法

があります。

投薬療法

投薬療法は肩峰下滑液包キシロカイン・リドカインなど局所麻酔薬を注入することで痛みが緩和する治療法事を言う。注射頻度は大体1~2か月に一回といわれています。
投薬療法で最も効果があるのでNeer法です。注入後に疼痛が緩和すると肩峰下滑液包の挟み込みによる痛みだと推測できます。

リハビリによる理学療法

リハビリによるリラクゼーション・ストレッチ・インナーマッスル強化・円背などの姿勢の修正が行われます。

リハビリによる理学療法の内容

リラクゼーション・ストレッチ

インピンジメントの要因として、姿勢不良による肩甲骨のアライメント不良が要因としてあるため、肩甲骨のアライメント修正・ゼロポジションやスキャプラプレーンでの疼痛緩和を目的に介入していきます。
※ゼロポジション:上肢を挙上140°で肩甲棘と上腕骨が一直線になる事
スキャプラプレーン(肩甲骨面):肩甲骨が前額面上で30°前方といわれていますが、要するに肩関節の関節包や靭帯のバランスが整っていて、上腕骨回旋時の疼痛ストレスがかかりにくい機能的なポジショニングの事を言います。

インナーマッスル強化

筋トレも重要なリハビリの一つですが、ダンベルやバーベルなどのウエイトトレーニングではありません。低負荷で等尺性収縮を用いて軽いトレーニングする必要があります
インナーマッスルトレーニングは、ローテーターカフ(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)のトレーニングです。
方法としては、チューブトレーニングや上肢をキープした状態で低負荷の外的出力を与えることで痛みのない範囲で肩甲帯周囲のインナーマッスル強化を行っていきます。

円背などの姿勢修正

インピンジメントの要因の一つである。年齢による姿勢不良によって、関節包内の循環不良や肩甲帯のゼロポジション・スキャプラプレーンの阻害が起こる事で疼痛が見られることがあります。そのため、脊柱や胸郭のアライメント修正を行い、体幹のアップライト姿勢を促すことで肩甲帯への血液循環や肩甲帯のポジショニング修正を行っていきます。

まとめ

インピンジメントとは、遺伝的要因を除いて肩甲骨と上腕骨のアライメント不良が起こっている状態での上肢挙上や外転動作などの過活動による肩峰下滑液包や腱板の循環不良による疼痛・投球動作などでの肩甲上腕関節窩の過剰衝突による関節や腱板の損傷や炎症による疼痛の事を言います。その影響により肩甲上腕リズムに乱れが生じ肩関節挙上・外転・外線動作に疼痛が出てしまう状態の事です。
そのため、インピンジメントの治療では
・肩甲骨や姿勢のアライメント修正
・肩峰下滑液包や肩甲上腕関節の循環不良改善
・関節包内ローテーターカフの強化による肩甲上腕関節への負荷量軽減
を中心に介入していく必要があります。

インピンジメントは高齢者に多く、円背などの姿勢から肩甲帯のアライメント不良がみられ、その状態で洗濯動作などの上肢挙上位を何度も行うためインピンジメントが起こる可能性が高くなると考えます。そのため、高齢者のインピンジメント治療では肩甲帯や体幹の姿勢アライメント修正を行い肩甲上腕リズムの向上を目指す事が多いです。
野球肩などの投球障害では、関節窩内で炎症が起こっている場合が多いため、治療では炎症が収まってから肩甲帯の柔軟性向上・ローテーターカフの強化を中心に介入していき肩甲上腕関節への負担を減らすような治療を行う事が多いです。

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